理事長退任によせて~25年をふりかえる

 

                                   下西 さや子

                                                

 振り返ればCAPを始めて25年。当時幼児だった娘が一児の親になるほどの年月が経ったことに、いまさらながら自分でも驚いています。CAPから折々にヒントを得、また、CAPを通しての出会いから多くのことを学んだ歳月でした。

 講演やおとなワークが主だった私は、被虐待経験のある人、子育てへの不安を抱いている人、夫や息子からの暴力に悩んでいる人から、主催者や新聞社を通して個人的にご連絡を頂くことが、まだ支援体制の乏しかった2000年前後には特によくありました。そのなかから今も心に残っている出会いの一端を共有させていただくことにします。

(プライバシーへの配慮から、本人の特定につながる情報を少し加工していることと、紙幅の都合から概要のみになることをお許しください)

 

 この出会いの発端は、小学校での子どもワークでした。ワークを受けた4年生のAさんが「両親からテストの点が悪いと夕食抜きとか、たくさんの決まり事があり、それを少しでも破ると叩く殴るなどの体罰を受けている」とトークタイムでメンバーに訴えたのです。メンバーは話を聴いた後で、担任の先生にも話すことを勧め、Aさんに付き添いました。先生はプログラムのなかの台詞にあるように「よく話してくれたね」と丁寧に話を聴いてくださったようです。

 たまたま、この先生と知り合いだったこともあり、その日の夜、電話をもらいました。先生の話では、Aさんの訴えを、地元でよく知られた教育者である父親と教育熱心な母親とを思い浮かべ、信じられない気持ちで聞いたこと。そして放課後にAさんのお母さんから連絡があり、「娘から、ワークを受けて興奮し、先生に作り話をしてしまったと打ち明けられた。心配かけて申し訳ない」という話を聞いて、Aさんがなぜそんなことを話したのか釈然としない思いはありつつも、ほっとしたところがある、と言われました。

私は、CAPのワークの後、子どもがトークタイムでありもしない話をしたという例は一度も聞いたことがない。子どもが担任に家庭での暴力について話すのはとても勇気がいることなので、Aさんの話したことを信じてほしいと伝えました。また、Aさんのお母さんが私の連絡先を尋ねられたので伝えていいかと聞かれ、了承しました。

 それから2~3日経って、おかあさんから私に電話がありました。混乱しておられる様子が電話口から伝わってきました。「娘の話したことは事実である。夫から体罰を受けないように、厳しくしつけているつもりだったが、娘が抵抗するようになって、自分も手をあげるようになってしまった。今回のことで娘の気持ちがよくわかったので、今後娘が安心できるような家庭にしていきたい」というお話でした。

 おかあさんが事実を認めてくれたことにまずはホッとしていると、「実は夫から暴力を受けている」ことを涙ながらに打ち明けてくださいました。子ども家庭センターに相談にいくこと、担任の先生に事実を話すことを強く勧めましたが、「この度のことが世間に知られると大変なことになるので、学校にも秘密にしてほしい」と強く言われました。しかし、このまま担任に事実を話さないとAさんが追い詰められてしまうので、「体罰があったことは事実だ」ということだけでも伝えてほしいとお願いしたところ、最終的には了承してくださいました。

 その後、Aさんとおかあさんの心身の安全確保をどうしていけばいいか、名前などは伏せたまま婦人相談所の相談員と話し合いながら、おかあさんと連絡をとりあいました。

 それから2年半の間、色んなことがありましたが、離婚が成立しました。久しぶりに会った時のおかあさんは、初めて電話をもらったときとは別人のように、生き生きと仕事をする女性に変わられていました。(これが本来の姿なのでしょう)

 

 うまくいった例ばかりではありません。DV夫から逃げることができたと思っていたら、連れて逃げた男の子から暴力を振るわれるようになったという話は珍しいことではありません。配偶者暴力相談支援センターはもちろん、児童相談所、子どもの通学先のスクールカウンセラー、警察の生活安全課など、あちこちに相談しましたが、18歳未満の子どもからの暴力に対応してくれるところはありませんでした。(現在もです)

 親から虐待を受けて育ち、子育てに不安を抱えているおかあさんたちとの出会いもありました。同じような悩みを持った当事者の会を作り、月2回の語り合いを託児付きで行うことができたのは、公民館のバックアップがあったからでした。会を続けるうちに、皆さんの顔が輝いてきたことが強く印象に残っています。この当事者の会の一員だったBさんは、その後、保健師の資格を取得して、虐待のリスクの高い親のケアをしておられます。

 

 こうした出会いは、いずれも何らかの形でCAPと接点のある方々でした。CAPは、暴力にあっている人の人生を変えるほどの力を持っています。その活動の一端を担うことができたことを改めて幸せに思います。そして、今も誇りに思っています。

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